Reese Williams

おそらく1980年代の初期か中頃、池袋西武の12階にあった美術書専門のショップ、アールヴィヴァンに併設されていたレコードショップで、この謎のアーティスト -  Reese Williams の'Sonance Project' と題されたLPレコードを購入したと記憶している。

www.discogs.com

それは、極短い人声の録音のループを、両面に渡ってランダムに繋いでいく、謂わば「テープ音楽」と言えるものが収められているレコードだった。米国のアーティストである事、このレコードがロサンゼルスの無名レーベルから配給されている事以外は、その後の永い間、このアーティストの情報を得る事はなかった。

 

インターネットが恒常化されて久しい2010年代に入り、突如情報がもたらされた。Reese WilliamsはNY近郊に移り、Bandcamp上にて、電子音楽の創作という形で活動を継続している事が判明した。そこでは、あの'Sonance Project'も再び聴く事が出来る。

reesewilliams.bandcamp.com

他の音源も聴く事が出来るが、最近の電子音楽創作のためのソフトウェアを駆使して制作されたと思われる、秀逸な電子音楽の近作が並んでいる事に驚かされた。

 

そして2018年。シカゴのレーベルより、2013年の作品が、それぞれ限定のCDRとカセットという形で正式に再発リリースされていて、そこのサイトでは、この作家の経歴も見る事が出来る。それによると、彼は1970年代初頭の西海岸の実験音楽シーンから活動していたようである。おそらく、テープループを使うという手法からも、当時のカール・ストーンイングラム・マーシャルといった人々との関連性もあったのだろう。

Reese Williams – Moon’s Bright Path | LOVE ALL DAY

 

以下のサイトでも、この作品を聴く事が出来る。30分にも渡る微細な音粒が幾重にも重なった、ドローン状の電子音楽である。

soundcloud.com

 

数十年に渡って活動を継続していたReese Williamsという人物。興味は尽きないところだ。